長栄寺の十一面観音像

  12年に2度、丑年・午年の秋に開扉

住所

市原市宿223

 

 

訪問日 

2009年10月24日

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

いちはらの文化財・平成17年度以前の指定文化財

 

 

 

拝観までの道

長栄寺は、南北に長い市原市の東南の端、房総半島のちょうど真ん中あたりにある。

小湊鉄道線の上総牛久駅と外房線の茂原駅を結ぶ小湊鉄道バスで「相模屋前」下車、すぐ北側の高台に立つ。天台宗の比較的小さなお寺である。 

 

小湊バス

 

本尊十一面観音像は秘仏で、12年に2度、丑と午の年の秋、1週間ほど開帳される。2009年は開帳は10月18日(日)から10月25日(日)までであった。

問い合わせは市原市教育委員会へ。

なお、2016年に県指定文化財となっている。

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺や仏像のいわれ

寺伝によると、伝教大師最澄がこの地を訪れて、この像と笠森寺の本尊を一本のクスノキから彫り出したという。お寺の方は、「こちら(長栄寺)の観音が姉で、笠森の観音が妹」とおっしゃっていた。

しかしこの像には銘文(像内墨書銘)があり、実際には鎌倉時代中期の1264年に仏師賢光の作であること、もともと上総国の天気寺というお寺にあったことが知られる。

賢光作の仏像はこの像を含めて7件知られているが、すべて千葉県内にあり、この地域で活躍した仏師であったことがわかっている。像内には室町時代後期の修理銘もあり、その際には上総国の龍泉庵というところにあったらしい。この寺にもたらされた経緯は不明である。

 

 

拝観の環境

厨子中にあって、頭部はややかがんで覗きこまないと見えないが、堂内は明るく、またすぐ前まで進むことができて、よく拝観できた。

 

 

仏像の印象

像高は約160センチ、割矧(わりは)ぎ造。玉眼。材はカヤかと思われる針葉樹。

顔は四角ばり、胴はしっかりとくびれるとともにお腹を丸く出す。肉身部には後補の白い彩色が塗られていることあり、このお腹の丸みは結構生々しい。右腕は長く、下半身は短躯である。裙の折り返しは賑やかに刻まれる。下肢の衣の襞(ひだ)は深く重厚である。

 

他の作例でもそうだが、作者の賢光はくせのある像をつくる。この像にしても一筋縄ではいかないようなところがある。個性の強い地方仏師の面目躍如たる造形である。

本来右手には錫杖を持つ長谷式観音であったと思われるが、亡失。頭上面、左手、両足先、天衣の垂下部は後補。

 

 

さらに知りたい時は…

『千葉県の文化財』20、千葉県教育委員会、2017年

『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代 造像銘記篇』9、中央公論美術出版、2013年

「中世の在銘仏を訪ねる」(いきいきいちはら歴史セミナー資料)、市原市教育委員会、2009年

 

 

仏像探訪記/千葉県