一乗寺の観音菩薩像

秘仏本尊の前立ち仏

住所

加西市坂本町821-17

 

 

訪問日 

2017年5月28日

 

 

 拝観までの道

姫路駅北口から一乗寺経由社営業所行き神姫バスにて「法華山一乗寺」下車、すぐ。バスの本数はおよそ2時間に一本で、乗車時間はおよそ35分。

 

宝物館の拝観は事前の連絡が必要。

希望日と人数、名前などを書き、2週間前までに往復はがきかFAXで申し込む。

筆者はFAXでお願いを出したところ、すぐにお返事が来て、その書状が拝観許可書となるので納経所に申し出るようにとあった。

宝物館はお寺の入口の横手にあるが、いったん本堂まであがり、堂内の納経所で書状をお見せしたところ、係の方がご対応くださった。

 

 

拝観料

入山料500円+宝物館拝観料500円

 

 

お寺や仏像のいわれなど

一乗寺は西国三十三所観音霊場の第26番札所。天台宗寺院。

寺伝によると創建は7世紀なかば、インドから飛来した法道上人によって開かれたと伝える。はじめはさらに北にあったらしい(「古法華石仏」が残されている地という)。

バス通りから拝観入口を経て、急な石段を上っていくと左手にあらわれる三重塔は平安時代末期の国宝建造物である。このころは法華寺、または法華山寺と称していたようだ。

中世には、叡尊や後醍醐天皇も来山し、またこの地を支配していた赤松氏によって城塞が築かれたりした。また、江戸時代には姫路の大名によって厚く信仰されたようで、本堂は江戸時代初期、大名・本多氏の寄進により再建されたものである。

 

本尊は聖観音像で秘仏。奈良時代をさかのぼる古い金銅仏で、写真を見ると、装飾の少ない清楚で美しい像とわかる。

その前立ち仏も古代の金銅仏で、現在宝物館に移されている。

 

 

拝観の環境

宝物館は土蔵のようなつくりで、宝物はケース内で展示されている。

展示の仕方やガラスは古風で、懐かしさを感じる。

前立ちの観音像は宝物館の一番奥、独立ケース内の安置され、近くよりよく拝観できた。

 

 

仏像の印象

前立ちの観音像は像高約80センチの立像。さわやか、すがすがしい雰囲気の金銅仏である。

まげをかわいらしく結い、小さく可憐な冠をつける。額を狭くし、また眉と目も接近して、あごを広く取る。目、鼻、口を顔の上の方に配され、おだやかな眉のカーブと切れ長の目、柔らかな曲面をなすほおで、すました表情をつくっている。

細身でほぼ直立する体は抑揚が少なく、その代わりにといってよいのか、にぎやかにアクセサリーを下げている。

下肢では衣の衣のひだをおだやかに平行線を描く。足もとや両足の間、すなわち衣の端となる部分には唐草模様が描かれて、アクセントになっている。

 

 

その他

このほか宝物館の中には、前立ちの聖観音像とは真逆に頭部がたいへん大きくつくられたかわいらしい金銅の菩薩立像、平安時代の僧形坐像、鎌倉時代の法道上人像などの彫刻が安置されている。

 

銅造菩薩立像は大きく、前に突き出した顔、単純な面でつくられた体が印象的な像で、像高は約60センチ。体は火中して破損をしたのか、裙の上端部分で鋳継がれている。奈良時代前期ごろ、新羅彫刻の影響の強い仏像といわれている。

僧形坐像は像高1メートルあまりの寄木造。どっしりとした存在感ある像で、銘文によると鎌倉時代初期の1192年に重源ゆかりの高野新別所から迎えられて、1193年に彩色されたとある。移されてきた経緯や、像名などは不詳。

法道上人像は老相をあらわし、あごひげを伸ばし、頭巾をかぶり、杖をつく。像高は約150センチの立像で、ヒノキの寄木造。この像にも銘文があり、鎌倉時代後期の1298年に巧匠賢清という仏師によってつくられたとわかる。鎌倉彫刻らしいリアルさを追求した像である。

 

 

さらに知りたい時は…

『播磨の国宝』、播磨学研究所・編、神戸新聞総合出版センター、2018年

『加西市史』4(本編4 文化財)、加西市史編さん委員会、2003年

『法華山一乗寺』(『兵庫県立歴史博物館総合調査報告書』1)、兵庫県立歴史博物館、1985年

「兵庫・一乗寺観音菩薩立像について」(『仏教藝術』158)、浅井和春、1985年1月

『はりまの名刹 法華山一乗寺の秘宝』(展覧会図録)、兵庫県立歴史博物館、1984年

 

 

仏像探訪記/兵庫県