四天王寺の薬師如来像

11世紀後半の貴重な基準作例

住所
津市栄町1丁目892


訪問日 
2017年4月1日


この仏像の姿は(外部リンク)
四天王寺ホームページ・境内・文化財

 



拝観までの道
四天王寺は津駅の南、徒歩約10分。
日中であれば堂内で拝観できる。しかし、行事等もあると思うので、事前に問い合わせてうかがうのがよいと思う。


拝観料
志納


お寺や仏像のいわれなど
曹洞宗寺院。津市内でも有数の大きなお寺である。
創建は聖徳太子という。境内出土の古瓦より、古代にはじまる寺院であることが確かめられている。江戸時代、津の城主、藤堂氏によって復興された。
20世紀なかばの戦災で、多くの寺宝を失った。
ことに、胎蔵界大日如来像、阿弥陀如来像、阿しゅく如来像、千手観音像、薬師如来像と失われた平安仏は5躰にのぼり、愛知・七寺の阿弥陀三尊像中尊とともに本当に惜しまれる。


拝観の環境
本堂本尊に向かって右側の間に安置されている薬師如来像は、像高約65センチの比較的小さな坐像で、戦災をくぐり抜けた古仏である。
厨子中に安置され、間近から拝観できる。ただし、厨子の全面にはアクリルガラスが入っているために映り込みがあり、若干見えづらい。


仏像の印象
ヒノキの一木造で、背中からくりがある。
全体として、かわいらしい印象の仏像である。頭部が大きめであるためにそのように感じるのであろう。
肉髻は自然の盛り上がりを見せ、顔は目鼻立ちが中央に集まる。足は右を上にし、衣の襞は浅いがしっかりと刻んで、いわゆる定朝様の仏像の穏やかさとはまた別の端整さがある。

像内に納入品があり、その中の記述から、願主は物部美沙尾とわかる。1077年の年が書かれているので、この頃の作と考えられている。
また、鏡、櫛、扇、針など女性の生活に関係が深いものが納入されていて、これらは願主の物部美沙尾ゆかりの品々なのであろう。これら納入品は江戸時代に取り出され、別に保管されている。


その他
境内の会館の喫茶はランチ、カフェメニューともに充実している。


さらに知りたい時は…

「ほっとけない仏たち36 四天王寺の薬師如来」(『目の眼』507)、青木淳、2018年12月

『戦災等による焼失文化財 昭和・平成の文化財過去帳』、文化庁編、戎光祥出版、2017年

『三重県史 別編 美術工芸』、三重県、2014年
『津市の仏像 津市仏像悉皆調査報告書』、津市教育委員会、2004年
『戦災等による焼失文化財 増補版 美術工芸篇』、文化庁、1983年
『日本彫刻史基礎資料集成 平安時代 造像銘記篇』2、中央公論美術出版、1967年


仏像探訪記/三重県