石像寺の石造阿弥陀三尊像、弥勒仏像
鎌倉前期石仏の優品
住所
京都市上京区花車町503
訪問日
2013年7月13日
拝観までの道
石像寺(しゃくぞうじ)は、バス停「千本上立売」(京都駅前から市バス206系統など)の北側すぐ。
拝観料
特に拝観料等の設定はなかった。
お寺や仏像のいわれなど
浄土宗寺院。本尊は地蔵菩薩像で、「釘抜(くぎぬき)地蔵」として知られ、信仰を集めている。お堂を繰り返し廻りながら願かけをする方がたえない。
地蔵堂の裏手に、石仏を安置する小堂がある。中央の阿弥陀三尊石仏とその向って右側に立つ弥勒仏石像は、鎌倉時代の石造仏の優品である。ともに花崗岩製で、光背・台座まで一材より彫り出されている。
拝観の環境
すぐ前よりよく拝観できる。
仏像の印象
中尊の阿弥陀如来像は、像高約90センチの坐像。
定印を結ぶが、手先と脚部は失われている。また、胸のあたりで真横に折れた痕が見られる。しかし、表面の風化など進んでいず、全体的にはとても保存状態がよい。
やや面長で、きりりとした顔つきが凛々しい。目は切れ長、鼻は大きめで、顎はやや小さい。螺髪の粒は大きめにつくり、肉髻は高めである。上半身は大きく堂々としている。
光背裏に造像年と願主名が3行で刻まれているそうだ。それによると、鎌倉前期の1224年12月に造りはじめ、翌年4月にかけ、5ヶ月ほどでつくられ、願主は伊勢権守佐伯為家という人と知られる。残念ながら作者名等は書かれていない。
なお、佐伯為家は、1178年に従五位下に叙せられたと記録にある人物らしい。
脇侍の観音・勢至像は、像高1メートル余りの立像。ほぼ直立した落ち着いた雰囲気の像である。
観音像は片手で開いていない蓮華を持ち、もう片手を近づける。勢至像は胸前に合掌する。ともに美しい冠をつけているのが印象的である。顔は小さめに、上半身は大きく堂々と、下半身はすらりと長くつくられ、プロポーションがよい。
控えめに端に立つ弥勒仏像は、これもきりりとした立ち姿で、美しい木彫像のようだ。
それぞれの像の光背には梵字が刻まれているが、中尊は阿弥陀の「キリーク」、以下観音の「サ」、勢至の「サク」、弥勒の「ユ」と、それぞれの尊像をさすものとなっている。
さらに知りたい時は…
「石像寺 阿弥陀如来及両脇侍像」(『国華』1216)、奥健夫、1997年2月
『解説版 新指定重要文化財3、彫刻』、毎日新聞社、1981年