2012年に開館したミュージアムより

ヤオコー川越美術館
ヤオコー川越美術館

 

 

1 郷さくら美術館 東京 (3月開館)

 

 2006年に福島県郡山市に開館した「郷(さと)さくら美術館」の東京館として、中目黒に近い目黒川のほとりにオープン。外観は、桜をかたどった有孔タイルで装飾する。

 展覧会は、基本的にこの美術館のコレクションによって構成し、年間数回、テーマを決めて行っている。

 コレクションは同時代すなわち20世紀前半以後に生まれた作家による日本画で、比較的大きなサイズの作品が多い。郡山の郷さくら美術館は、そうした大作をゆったりと展示できる広さをが確保されているようだが、東京館はもと店舗とオフィスが入っていた建物なので、それほど大きな美術館ではない。しかし、既存の建物の再利用、改修によって美術館として生まれ変わったものだけに、町の雰囲気によくマッチしている。また、既存建物を解体し新築した場合に比べて環境負荷の低減にもなったことなどもポイントとなり、2012年のグッドデザイン賞を受けた。

 展示室は1〜3階で、各階10〜20点ほどの作品を展示する。正直かなり手狭という印象を受けるが、作品からある程度の距離をとってもなんとか鑑賞できるよう工夫し展示されている。

 照明は明るめにして、日本画ならでは顔料の美しさがよくわかる。

 

郷さくら美術館 東京(外部リンク)

 

  

*原則月曜日、火曜日および展示替え期間、年末年始休館。東京都目黒区上目黒1-7-13。東急東横線、東京メトロ日比谷線の中目黒駅より徒歩5分。

 

 

 

2 ヤオコー川越美術館(三栖右嗣記念館) (3月開館)

 

 ヤオコーは1890年に埼玉県小川町の青果店としてスタートし、現在は北関東を中心に100以上の店舗展開をしている食品スーパーチェーンである。

 ヤオコー川越美術館は、同社の120年の記念事業として、本社のある川越市内にオープンした。

 「三栖右嗣(みすゆうじ)記念館」とも称するのは、収蔵し展示している作品が油絵画家、三栖右嗣の絵画作品のみ(デッサンも含めて約150点、そのうち30点ほどを交代で展示)であるからである。

 建物は、伊東豊雄建築設計事務所の設計。

 

 さて、この美術館は現代の企業も芸術に関してこれほどのことができ得るのだというお手本のようである。

 まず、企業の宣伝臭さがまったくといっていいほどない。館に企業名を冠することと、ショップで関連書籍が売られていることくらいである。立地も、まったく新たに選定されたものである。

 収蔵作家である三栖右嗣は、写実的な作風で、50歳近くになって安井賞を受賞し広く知られるようになった遅咲きの画家である。神奈川県出身だが、長く埼玉県ときがわ町にアトリエを構え、2010年に亡くなった。この方とヤオコーとの関係だが、特に身内であるといったものではない。県内在住であったすぐれた作家の作品が散逸することなく後世へと伝えたい、じっくりと鑑賞できる場所をつくりたいとの願いからこの美術館はスタートしている。

 その願いを実現するための必要かつ十分な1棟の建物によってこの美術館はできている。上から見てほぼ正方形の1階建てのコンクリートの建物である。

 

 この美術館があるのは川越観光の起点となる鉄道駅から北に2キロあまりの場所で、歩くとやや遠いが、川越の観光地を巡る循環バスなどが頻繁に通るので便はよい。

 バスを降りて、川越氷川神社の脇を通り、川を渡ると、やがてコンクリートの四角い建物が見えてくる。中は単純に4つの区画に仕切られている。最初のスペースがエントランスで、受付とショップがある。その奥が第1展示室、反時計回りに第2展示室、ラウンジ(カフェだが、作品も展示されている)、そしてエントランスへと戻る。

 以上のように、実に単純なつくりであるが、数々の工夫がなされている。

 まず気がつくのは、各部屋の壁がコンクリート打ち放しの面と色を着けた壁とによって構成されていることである。照明も変えられていて、第1展示室は暗い中に絵画が浮かび上がるように展示され、第2展示室、ラウンジと進むにつれて部屋の雰囲気は明るくなる。そしてそれに合わせた作品が選ばれて展示されている。

 作品の表面には、デッサンの作品を除いてガラスを入れず、鑑賞しやすい。

 ついで気がつくのは、4つの部屋を仕切る壁面が直角に交わらず、また緩やかに湾曲していることである。このために各部屋は均質で無機質な空間となることを免れている。また、第2展示室では、その天井が中央に向って高くなっていて、外光が取り入れられている。機能的であり、かつ美しい空間となっている。

 

 外に出て改めて美術館の全体像を見ると、外壁が実に美しい。それほど高さがないのがよい。もし2階建て以上でコンクリート打ち放しであったならば、かなり威圧的に感じることだろう。

 

 ただひとつ気になったのは、建物内部の音の反響である。どこの場所からの話し声も響きながら届いてしまう。この建物の構造上の特質であり、致し方ない部分もあるのだろうが。

 

ヤオコー川越美術館(外部リンク)

 

 

*川越市氷川町109-1、原則月曜日および年末年始休館。

*なお、このほかに三栖右嗣の作品を常時展示しているミュージアムとしては、「三栖右嗣リトグラフ展示室」(ときがわ町の文化センター内)がある。

 

 

 

3 軽井沢ニューアートミュージアム (4月開館)

 

 軽井沢駅の北、徒歩10分弱という場所に、日本やアジアの現代美術の今日的展開の様相を広く内外に発信することをミッションとする軽井沢ニューアートミュージアムが誕生した。

 

 外観は、ガラスと白く塗られた丸く細い柱が軽快な印象。中も明るく、ある程度天井高も確保されているので、快適な展示空間を実現している。壁面は、さまざまな現代アートが並んで違和感が最も少ない白色を基本とする。

 2階建てで、1階は無料スペース。新進作家や地元のアーティストを積極的に紹介するギャラリー、品揃え豊かなショップ、レストランなどからなる。2階が企画展スペースである。

 

軽井沢ニューアートミュージアム(外部リンク)

 

 

*長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1151-5、原則火曜日休館

 

 

 

4 日本万華鏡博物館 (9月 移転オープン)

 

 1998年より東京・渋谷で開館していた日本万華鏡博物館が、埼玉県の川口駅近くに移転、オープンした。

 マンションの一室を使った小さな博物館で、館長が収集した古今東西の万華鏡を展示するとともに、館長のお話を聞いたり、万華鏡づくりが行えるユニークな場となっている。

 

 万華鏡は19世紀初頭のスコットランドで生まれた。かつては幾何学模様を学習するための教材であり、子供用の玩具であったものが、1980年代よりユニークなアイディアを競いあうアートとしても発展していく。

 しかし万華鏡は壊れやすい。筒が紙製であるものも多く、また鏡を内蔵し掲げて見るものであるために落とせば必ず壊れる。そうした性質上、自由に手に取れるというミュージアムというのはつくりにくい。

 そこでこの博物館では、館長自らが万華鏡の仕組みや歴史を解説することで、観覧者の興味を引き出すとともに、解説の流れの中でいろいろな種類の万華鏡を手に取って体験できるように組み立てている。

 

 見学は日中の毎時00分から各回40分間くらいで、1回につき数名の参加で行われる。1名でも参加可能。予約優先(土日は予約のみ)。

 

日本万華鏡博物館(外部リンク)

 

 

*川口市幸町2-1-18-101。「見るコース」は1,000円。「作るコース」は1,500円〜(キットによって値段はかわる)。

 

 

 

5 東京ステーションギャラリー (10月 再オープン)

 

 東京ステーションギャラリーは1988年に開館し、年間6回前後、企画展を開催してきた。それほど広い会場ではないものの、東京の中央駅の中という利便性のよさ、また駅や鉄道をテーマにした美術展もあり、国内外の近現代のアートを紹介する意欲的な展覧会など、面白い内容のものがあった。

 2006年より東京駅の復元整備にともない長期に休館となり、2012年10月に再オープンした。

 東京駅の丸の内口駅舎内という立地は変わらないが、以前は中央部にあったものが、北口改札を出て右側に移された。

 展示室は2階と3階で、3階はさまざまな展示に対応がきく白い壁の展示室、2階は東京駅の赤レンガをそのまま生かしたこの美術館ならではの展示室としている。

 入場は1階、エレベータで3階へ、その後2階へという順路。美術展の鑑賞では、階をまたぐとどうしても流れがいったん切られてもどかしく思うことがあるが、このミュージアムの場合、階段を使って移動する際に、駅発足当時のレンガの壁を鑑賞でき、そのままレンガを生かした2階の展示室へと進むことができる。

 展示室の最後にあるショップも充実している。

 

東京ステーションギャラリー(外部リンク)

 

 

*東京都千代田区丸の内1-9-1、東京駅丸の内北口改札前(東京駅丸の内赤煉瓦駅舎内)。原則月曜日、展示替え期間休館。

 

 

 

 

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