2009年に開館したミュージアムより

アミューズ ミュージアムの展示室
アミューズ ミュージアムの展示室

 

1 山梨県立美術館・ミレー館(1月オープン)

 

 山梨県立美術館の開館は1978年。この頃は、自治体による美術館設立が盛んに行われた時代だった。その結果として、少し大きな町に行くと美術館があって、アートに親しむことができる。これは素晴らしいことである。

 しかしその実態はお定まりの「箱物行政」であり、建物は立派でも中身は特色のない美術館が多いことは否めない。また、つくる時には多く予算をとっても、出来てしまえばその後の運営や新規購入の費用はお寒いということもよく聞く。

 その中で、山梨県立美術館は「種をまく人」を購入して話題をさらい、ミレーの絵に会えるという特色を打ち出すことで、時には駐車場が溢れるほどの集客力を見せた。その一方で「一点豪華主義」との揶揄も受けた。

 それから30年。山梨県立美術館は地道にミレー作品(およびその周囲の作家の作品)の収集を続けた結果、現在は70点(版画なども含む)もの作品を所蔵する世界有数のミレー美術館へと成長した。そしてこの度、常設展示室をリニューアルして「ミレー館」として整備。「箱物」に終わらせず、一貫した方針によって特色ある美術館としての存在感を顕わしている。地方の美術館の大いなる歩みというべきである。

 版画作品などは展示替えがあるが、代表的な油彩画は基本的に通年鑑賞できる。なお、ロビーには視覚障害者向けの「手で見るミレー」(立体コピー)が常設展示されている。

 

→ 山梨県立美術館のホームページ

 

*常設展一般500円。休館日は原則月曜日、ほかに年末年始など。住所は、甲府市貢川1-4-27(甲府駅よりバス15分「山梨県立美術館」下車)

 

 

 

2 宮川香山記念館(4月開館)

 

 宮川香山(みやがわこうざん)の陶磁器を展示するミュージアムとして横浜に開館した。

 江戸時代後期、京都・真葛原(現京都市東山区)の京焼作家の子として生を受けた香山は、近代初期、横浜に進出し、「眞葛(まくず)焼」と称して、海外向け陶磁器の生産を行った。壷、水差、水盤など伝統的な器に蟹、猫、鷹などさまざまな生き物を高浮き彫りのようにあしらった派手な作品は、アメリカやヨーロッパに輸出された。

 香山の名と窯場は2代、3代と受け継がれるが、初代の孫である3代めは1945年の横浜大空襲によって家族や陶工とともに焼死、窯も灰燼に帰した。その弟が戦後4代めを継ぐも、復興はならなかった。

宮川香山記念館は、香山の焼き物と眞葛焼の歴史に魅せられた実業家によって、もと眞葛窯のあった場所に開かれた。といっても、一般住宅の一部を使った2室だけの小さなミュージアムで、狭い空間を精一杯工夫して大小約40点の作品を展示している。

 

→ 宮川香山 眞葛ミュージアムのホームページ 

 

*2010年7月に展示はいったん終了。同年10月より場所を移し、名称を「宮川香山 眞葛ミュージアム」に変更して再オープン。以前よりも展示スペースが広くなり、多くの作品を紹介できるようになった。開館は土、日曜日のみ。入館料一般500円。住所は、横浜市神奈川区栄町6-1 ヨコハマポートサイド ロア参番館1F-2(横浜駅きた東口より徒歩約10分)

 

 

 

3 古代エジプト美術館(7月開館)

 

 2009年は、個人のコレクションを公開する小さいが個性あるミュージアムがいくつも開館した。

 渋谷に近いマンションの一室に開かれたこの古代エジプト美術館もそのひとつ。

 エジプト美術のコレクターが、その収集品を展示するために開いたミュージアムだが、作品をただ並べるのでなく、工夫をこらしている。エントランスは、エジプト文明の謎を解き明かすための発掘小屋という設定。そこからスタートし、いくつものテーマを巡る。ストーリーがよく組み立てられ、狭いスペースを大変よく生かして展示をしている。

 

 個人コレクションが、広く多くの人の目に触れる場へと出てくることは、たいへんうれしいことだ。コレクターの情熱やこだわりが前面にでた展示空間や展示の内容は、大きな博物館にはない面白味がある場合も多い。

 ただし、つくるとき以上に維持し運営することが大変なのがミュージアムというもの。はじめもの珍しさで訪れた客足は、時間を追うごとに下がっていくということも予想される。ぜひ、この古代エジプト美術館はじめとする個人ミュージアムが長く存続して、ユニークな活動を展開していくよう願ってやまない。

 

→ 古代エジプト美術館のホームページ 

 

*金、土、日、祝日に開館。一般1500円(貸し切りも可能)。住所は、東京都渋谷区神南1-12-18 メゾン渋谷801(渋谷駅ハチ公口から5〜10分)

 

 

 

4 アミューズ ミュージアム(11月開館)

 

 浅草寺二天門前にオープンしたこのミュージアムは、エンターテインメント企業「アミューズ」が美術館事業に進出し開いたもの。

 名前にこそ企業名が使われているが、ほかには一切宣伝臭さがない。建物は築43年のビルをリニューアルして使用しているそうで、なかなか趣きがある。

 「布文化と浮世絵の美術館」を掲げて、衣類や民具の展示と浮世絵の映像作品公開を行うほか、充実したショップがある。

 浮世絵の映像展示(UKIYOEシアター)は、ボストン美術館所蔵の浮世絵「スポルディング・コレクション」の超細密画像の上映である。このコレクションは、NHKの番組(2008年9月のNHKスペシャル)でも取り上げられたことがあり、保存状態のきわめてよい浮世絵コレクションとして世界的に知られる。しかし、映像はあくまで映像であり、あまり感動はない。

 一方、衣類の展示はすごい。在野の民俗学者・田中忠三郎(名誉館長)の収集した東北の古着類で、貧しさの中、着古した服をパッチワークを繰り返しながら何度もよみがえらせて使い続けた服のもつ凄みが感じられる。こうした古着はボロと呼ばれたが、今ではテキスタイルアート・「BORO」としてコレクションの対象になってもいるそうだ。触って鑑賞できるものも多数で、こうしたことは他の美術館ではない大胆な試みと思う。

 実演は、スタッフによる裂き織りが見られるほか、日によっていは和楽器や舞踊の舞台がある。

 

→ アミューズミュージアムのホームページ

 

*入館料は一般1000円。休館日は原則月曜日。ほかに展示替えによる休館日がある。住所は東京都台東区浅草2丁目34番3号(浅草駅から5〜10分)

 

*建物の老朽化のため、2019年3月閉館予定。

 

 

 

5 岩立フォークテキスタイル・ミュージアム(11月開館)

 

 民族染色研究家の岩立(いわたて)広子さんは、40年以上にわたり自ら世界各地の染織品の収集を行ってきた。数千点にのぼるコレクションの中心はインドの民族衣装。これまでも駒場の日本民芸館の企画展として公開されるなど、質の高いコレクションとして知られていたが、この度、東京・自由が丘のビルの一室に常設の展示場をオープンさせた。

 1つのテーマに沿って2ヶ月くらいずつ展覧会が開催され、100点あまりの染織品を明るい室内で見ることができる。

 

→ 岩立フォークテキスタイル・ミュージアムのホームページ

 

*入館料は一般300円。木、金、土曜日に開館。住所は東京都目黒区自由が丘1-25-13(自由が丘駅下車3分)

 

 

 

6 極小美術館(11月開館)

 

 岐阜県池田町に極めて不思議な美術館が開かれた。その名も「極小美術館」という。

 何が「極小」なのか。倉庫を改装してつくられた美術館であり、確かに面積は広くはない。しかし1階と3階に展示室があり、特に1階は天井高がしっかりとってあって、日本のミュージアムとしては「極小」というほど小さくはない。

 この美術館のユニークさは経済的活動から離れていることである。その意味で確かに「極小」といえる。

 すなわち、入館料をとらない。グッズを売らない。自治体や企業からの寄付を募らない。美術館と称しながら作品を売る画廊に近いミュージアムもあるが、そういうこともせず、逆に作品購入も行わない。

 オーナーは彫刻家・長澤知明さんで、本当に実力ある現代アーティストの展覧会が日本で行われてこなかったのではないかという問題意識から美術館の運営に乗り出した。

 最初の展覧会は、先頃亡くなった荒川修作、次が金属の抽象彫刻の作家として第一人者である鈴木久雄の個展で、以後も実力作家の個展を続けて行く予定とのこと。後半には若手や地元の作家を入れつつ、10年間を予定した活動期間のうちの8年めまでの展覧会がすでに固まっているということである。

 私は鈴木久雄展(2010年9月まで行われていた)を拝見したが、1階のスペースに堂々たる鍛造ステンレス鋼の彫刻が1点、ライトを浴びながら置かれているのを見、その存在感に圧倒された。

 見学は事前予約制。

 ぜひ訪れるべき美術館と思う。

 

→ 極小美術館のホームページ

 

*住所は 岐阜県池田町草深大谷939-10(養老鉄道美濃本郷駅下車、西へ徒歩約25分)。 予約電話は090-7916-4754

 

 

 

 

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