2018年に開館したミュージアムより

京都府立堂本印象美術館
京都府立堂本印象美術館

1 京都府立堂本印象美術館 (3月 リニューアルオープン)

 京都出身の日本画家で、戦前戦後に多彩な活躍をした堂本印象の作品を展示する美術館である。
 豊かな酒造家の3男として生を受けたが、生家の没落と父の死によって一家は一転、苦境に立つ。一時はデザインの道で生計を立てるものの、生来の絵画の才能が開花し、美しい線、豊かな色彩で人気を博した。伝統的な画題や仏画もさりながら、モダンな作風の絵画も手がけた。
 戦後は欧米の抽象主義の影響を受け、伝統的な日本画と抽象絵画の融合を目指し、また人形や陶器といった立体作品も手がけた。作品の幅の広さは、本当に同一人物がこれほどさまざまなものを作り出したのだろうかと驚嘆するほどである。
 印象は晩年、京都市北区衣笠の自宅に隣接して自ら美術館をつくった。ユニークな外観をもち、柱や扉のデザインにいたるまでそのすべてを自身の手で設計した。従ってこの美術館は、それ自体が印象芸術の集大成ともいうべきものである。開館は1966年。画家個人の邸宅がその死後記念館として公開されるというケースはままあるが、本人の手によって個人美術館がつくられ、その作品ばかりか建物や空間の構成からアーティストの感性に触れることができる場所なっているというのは、希有な例であると思う。
 印象の死後、1991年に美術館と所蔵品のすべては京都府に寄贈されて、府立の美術館となった。
 開館からおよそ半世紀、府立の美術館となってからでも四半世紀が過ぎて、外壁などの傷みが目立つようになったことから今回全面改修が行われた。その結果外観は美しくよみがえり、前庭や1階のエントランスも整備されて、さらに明るく親しみやすい美術館としてリニューアルがなった。

→ 京都府立堂本印象美術館(外部リンク)


*京都市バス、JRバスで「立命館大学前」下車、すぐ。原則月曜日休館。



2 ふじのくに茶の都ミュージアム (3月開館)

 島田市が運営していたお茶の郷博物館が静岡県に移管され、大幅なリニューアルを経てオープンしたのがふじのくに茶の都ミュージアムである。2014年に県が策定した「茶の都しずおか構想」の拠点として整備されたものという。これにともない、入館料は引き下げられた。
 県でおこなっていた事業を市に移管するというケースはよく聞くし、また料金改訂といえばたいていは引き上げられるものだが、ここではその逆パターンであるのが面白い。
 県内有数の茶の産地として知られる牧之原台地上に立地し、富士山が望め、また周囲には茶畑が広がる。広い敷地を有効に活用し、博物館、商業館(レストラン、ミュージアムショップ)、茶室、庭園がある。茶室と庭園は小堀遠州の美意識の再現を目指した大がかりなもの。茶室では音声ガイドが導入され、茶道体験も行っている。
 博物館は、3階が主として世界のお茶の生産や文化、2階が日本のお茶の文化や歴史の常設展示と企画展示室、1階はライブラリー。3階は茶の起源ともいわれる雲南省の樹齢1000年の茶の木のレプリカをはじめ、中国・上海の茶館を再現したコーナーなど、世界の喫茶文化を知ることができる展示になっている。2階では日本の茶の歴史や製造・流通についての苦心など、資料や映像を使って解説しているが、正確にかつ分かりやすく伝えたいという意気込みを感じる。
 ミュージアムショップはお茶に関連するさまざまな県産品を取り揃えて、楽しい。ただし、レストランは昼食時間を中心にした営業で、ミュージアムの閉館時間よりもかなり早く閉店してしまうのが残念である。
 
→ ふじのくに茶の都ミュージアム(外部リンク)

 
*JR金谷駅前からコミュニティバス菊川神谷城線(循環)で「ふじのくに茶の都ミュージアム」下車。または、しず鉄ジャストライン勝間田線、萩間線に乗車し「二軒家原」下車。金谷駅前にはタクシーが常駐。駅から歩こうと思えば歩けない距離ではないが、長い上り坂となるためにかなり大変。原則火曜日休館。



3 M@M(モリムラ@ミュージアム) (11月開館)

 現代美術家・森村泰昌は時代や洋の東西を問わず、さまざまな有名人や美術作品に扮するポートレート作品で知られる。今回、出身地である大阪市内に個人美術館がつくられ、テーマに合わせてまとまった数の作品が見られるようになった。森村ファンにはたまらないであろう。
 築40年ほどのビルの2階の1フロアで、縦に長いスペースに展示室が2つ。加えてミニシアター、資料室、ショップまで兼ね備える。また、森村の作品の中に入る体験も可能なスタジオが展示室の中に再現され、森村アートの神髄に触れることができる。

→ M@M(外部リンク)


*年間数回企画展示を行う。開館は金・土・日のみ。地下鉄四つ橋線北加賀屋駅から徒歩。

 




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茶の都ミュージアム(庭園)
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