2014年に開館したミュージアムより

三重県総合博物館
三重県総合博物館

 

1 あべのハルカス美術館 (3月開館)

 

 2014年に全面開業したあべのハルカス。大阪・天王寺駅に接続する高層ビルで、現在のところ日本で最も高いビルであるという。

 その16階には美術館がある。ビルの中に美術館を開くのは耐震、空調など、いろいろと難しいことがあると思うが、この美術館は国宝や重要文化財の展示も行える本格的な施設である。

 美術館のある階は展望台への入口でもあるが、ロビーと展示室の間隔をとることで、行きかう人々の喧噪はあまり入ってこない。天井高も一定程度確保されているので靴音も気にならず、ビルを支える柱も邪魔に感じられることがないよう配慮され、展示が行われていると思う。

 展覧会は日本美術、西洋の美術、古美術、現代のアートとさまざまなジャンルのものが1ヶ月半~2ヶ月半くらいの会期で開かれている。

 ショップも充実している。

 

あべのハルカス美術館(外部リンク)

 

 

*天王寺駅、大阪阿倍野橋駅からすぐ。休館日は展示替え期間のほかは、展覧会ごとに定める。会期中無休の場合と月曜日を休館とする場合があるようだ。

 

 

 

2 三重県総合博物館 (4月開館)

 

 前身である三重県立博物館は1953年の開館。東海地方でもっとも古い総合博物館であり、津駅にも近く利便性もよかったのだが、老朽化が進み、耐震性も十分でないとして、2007年をもって展示室が閉鎖となった。

 これにかわる博物館として構想され、曲折はあったというが、総合文化センターに隣接した地に三重県総合博物館(通称 MieMu、みえむ)がつくられることになった。

 入場口は2階。3階に企画展示室と基本展示室(常設展示)がある。

 三重県は南北に長く、また東西は海と山地にはさまれ、自然の恵みは豊かで、風土や暮しも多様性に富んでいる。基本展示室は三重県のもつこの多様性と東西の文化交流をテーマに、自然、歴史、文化を一体的に展示する。

 展示室の壁面は白色を基本とした上品にまとめ、回りにはジオラマや民俗資料の複製など大きな展示物を配置し、順路に従って中央部に入っていくにつれて歴史や文化交流を示す資料が次々と現れる。映像による解説も適度に取り入れられている。

 展示室以外では、学習交流スペースやレファレンスの充実が特長である。来館者の学習を深めるための支援システムが整えられている。

 このほか、省エネルギーなど環境への配慮、ユニバーサルデザインの積極的な採用、県内の石材・木材の使用、野外スペースの充実など、すぐれた点が多い。

 

三重県総合博物館(外部リンク)

 

 

*津市一身田上津部田1234、津駅西口より三重交通バスで「総合文化センター前」下車。休館は原則月曜日。土日祝日は19時まで開いている。

 

 

 

3 川崎市平和館 (4月リニューアルオープン)

 

 川崎市中原区は、南東から北西に細長い川崎市の市域のちょうどまん中あたりにある区である。近年開発がめざましい武蔵小杉の駅があると言う方が通りがいいかもしれない。

 その武蔵小杉駅の南1キロくらいのところに、中原平和公園がある。戦後米軍に接収されていた土地が1975年に返還され、まわりにあった公園も統合してつくられた広い公園である。その一番北側に川崎市平和館がつくられている。1992年の開館だが、今回はじめてのリニューアルが行われ、内容が増補されたほか、無料の音声ガイドも導入された。

 展示は、平和とは何かという問いかけにはじまり、日本および川崎の戦争体験とその背景、さらに現代の世界の平和を脅かす核兵器の存在や地域紛争、また環境破壊、貧困問題、さらに問題を伝えるメディアの特性まで幅広い内容となっている。 

 相当なボリュームがあるが、実物資料、模型、文字資料や図・表・写真、映像、音声を取り混ぜて伝えようとしている。

 

川崎市平和館(外部リンク)

 

 

*川崎市中原区木月住吉町33-1、最寄り駅は東急東横線の元住吉駅、休館日は原則月曜日と第3火曜日、入館は無料

 

4 京都国立博物館平成知新館 (9月開館)

 

 京都国立博物館の展示棟は、本館(明治古都館)と新館からなる。

 本館は19世紀末にこの博物館が開かれて以来の建物で、レンガ造の美しい展示館である。設計は片山東熊。西側の正門(本館と同時期の作)から噴水、ロダンの「考える人」の彫像を横目に進むと正面にある。新館ができたあとは、特別展スペースとして現在に至る。

 一方、新館は本館の斜め北側に位置する。

 平常展示のための館として1966年に開かれたのが先代の新館である。質実な建物であったが、老朽化もあって、立て直しが計画された。1997年の博物館開館100周年の記念事業として新たな新館づくりが検討されたというが、さまざまな事情で遅れ、平常展示を観覧できない時期が長く続いた。

 ようやく完成した新館は平成知新館と名付けられている。本館と正門がセットであるように、南門も合わせて設計され、ここから入館すると本館を右手に、噴水を左手に見ながら正面へと進んで平成新知館の入口に至る(現在は正門は団体以外には使用されていない)。

 以上のように、京都国立博物館は19世紀末と21世紀初期という2つの時間につくられた建物が東西と南北の2つの軸によって配置されている。

 なお、この南北の軸線を南に伸ばすと三十三間堂(蓮華王院)の南大門がある。また平成新知館入口の真ん前には発掘調査によって方広寺の南門があったことがわかっており、この南北のラインは京都の町の歴史を取り込んだものであるともいえる。

 

 設計にあたったのは谷口吉生氏は現代を代表する建築家であるが、彼はまた1999年には東京国立博物館法隆寺宝物館を手がけている。この両館は雰囲気がよく似るが、平成新知館の方がはるかに規模が大きい。また、法隆寺宝物館は動線が決まっていて1つ1つの部屋をひもとくように進んで進むのに対して、平成新知館の方は「必ずこう動いて!」といった順路は定めない。2階から1階の彫刻展示が、3階から2階の絵画展示室が見えたりして、逍遙している感覚が楽しい。

 1階に広くとられた彫刻の展示室では、大きな仏像彫刻はガラスケースなしの展示となっていてうれしい。ただし、スポットライト照明に頼った展示は、人により好き嫌いが分れるかもしれない。

 大胆に設けた3階までの吹き抜け部分や東側に併設されたレストラン(夕方までランチが食べられる)も好ましい。

 

京都国立博物館(外部リンク)

 

 

*京都市東山区茶屋町527、最寄り駅は京阪本線の七条駅。京都駅からは市バスで「博物館・三十三間堂前」下車、原則月曜日休館

 

 

 

5 東京都庭園美術館 (11月リニューアルオープン)

 

 2011年11月から休館していた東京都美術館が再開館した。

 リニューアルのポイントは2つで、ひとつは1933年につくられたという建物の細部の復元が行われたということ。壁紙や外壁など、本来の姿でよみがえった。

 もうひとつは新館がつくられたこと。ホワイト・キューブすなわちどんな作品にも対応できるニュートラルな展示空間が特徴。現代美術家の杉本博司氏のアドバイスによるものといい、個性豊かな本館の建築とぶつかりあわないつくりが好ましい。本館との接続部分のガラスのアプローチも美しい。

 ショップ、カフェも充実。

 

東京都庭園美術館

 

 

*東京都港区白金台5-21-9、最寄り駅は地下鉄の白金台だが、目黒駅からも歩ける。休館は原則毎月第2・第4水曜日。

 

 

 

 

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京都国立博物館平成知新館
京都国立博物館平成知新館