大法寺の十一面観音像
愛らしさと気品

住所
青木村当郷2052
訪問日
2008年9月14日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
上田駅前から千曲バス青木線に乗車し、約25分。バスはほぼ真西へ、この道は松本へと通じる国道143号線(松本街道)である。上田市から青木村に入ったところに「当郷」というバス停があるので、そこで下車、北へ徒歩15分くらいのところに大法寺(だいほうじ)はある。バスの本数は1時間に1本程度。
→ 千曲バス
位置としては、上田電鉄の別所温泉の北北西、直線距離で3キロ半ほどのところであるが、直接行く交通機関はない。別所温泉の方から大法寺に回りたい場合、上田駅まで戻るか、途中の上田原駅の前を青木線のバスが通っているので、そこで乗り換えるとよい。
「当郷」バス停から大法寺までは、案内板もあり、分かりやすい。上り坂だが舗装道路で歩きやすい。
大法寺は、「見返りの塔」とも呼ばれる美しい三重塔で有名な寺である。仏像の拝観は事前申し込みが必要。本堂の横手の坂をのぼり、青木村郷土美術館(ここには大法寺の塔の壁画の復元模写も展示されている)の先の石段を上がると拝観受付がある。その先に観音堂、さらにその上に塔が立っている。
拝観料
350円(境内と仏像両方で)
お寺のいわれ
寺伝によれば、奈良時代直前の大宝年間の創建で、古くは大宝寺と称したという。近くを古代の東山道が通り、浦野という駅(うまや)が置かれていたので、この駅との関係でつくられた寺であったのかもしれない。
拝観の環境
観音堂の本尊は十一面観音像である。ご住職が厨子をあけてくださり、間近で拝観することができた。
仏像の印象
像高は約170センチの立像、カツラの一木造。背中からくりがあり、そこに金銅の毘沙門天の小像を納めているそうだ。
顔は卵形で、頬からあごにかけての柔らかな丸みは魅力的である。眼はくっきりとは表さない。半眼よりもさらに閉じて、つぶったまぶたの丸みで表現されている。瞑想している様子なのであろうか。一方小さい口はやや開き気味である。愛らしさと気品をともに持った、一度見たら必ず魅了される顔つきである。
下半身が長く、衣の襞(ひだ)はややぎこちないが、浅い刻みながら、平安前期に見られる一木彫の仏像の衣の存在感を受け継いでいる。ただし、全体のおとなしい印象から、平安時代後期の作と思われる。
なお、厨子は室町時代のもので、 屋根のそりなどとても美しいが、もともとこの像のものではなかったようである(高さがやや窮屈)。
その他
本尊の脇侍として、1メートル内外の普賢、文殊と伝える2菩薩が壇上に安置されている。観音に普賢、文殊がつくという例はないので、おそらく元は別のお堂にあった像かとも思われるが、向って右の伝普賢菩薩像の方は、本尊と共通したつくりをしている。裙の結んだひもが長く垂れている様子など、とてもよい。こちらは厨子に入っていないので、側面からも拝観できる。
向って左の伝文殊菩薩像の方は後の時代の作だが、なかなか可愛らしい像である。
さらに知りたい時は…
『定本 信州の仏像』、しなのき書房、2008年
『一乗山大法寺写真集』(お寺発行の冊子)、2001年
『長野県史 美術建築資料編 美術工芸』、長野県、1994年
『仏像集成』2、久野健編、学生社、1992年
「謎の仏像を訪ねる旅」(『芸術新潮』1991年2月号)
「出現! 謎の仏像」(『芸術新潮』1991年1月号)