長谷寺観音ミュージアムの三十三応現身像

  観音が変化したさまざまな姿

住所

鎌倉市長谷3-11-2

 

 

訪問日

2012年4月7日、 2016年4月9日

 

 

この仏像の姿(外部リンク)

長谷寺ホームページ(観音ミュージアム)

 

 

拝観までの道

江の電の長谷駅より北へ約200メートル、「長谷観音前」交差点を左折すると、正面に長谷寺の山門がある。長谷寺の拝観入口である。駅から徒歩約5分。

(ミュージアムの休館日はお寺のホームページでご確認ください)

 

 

拝観料

入山料300円+観音ミュージアム入館300円

 

 

お寺のいわれなど

クスノキの霊木で2躰の観音像を刻み、1躰を大和の長谷寺の本尊とし、もう1躰を海中へと投じたところ、三浦半島の長井に漂着した。これを引き上げ、本尊としてまつったのが鎌倉の長谷寺であるという。時は8世紀前半のことと伝える。

伝世する寺宝からは、鎌倉時代半ばには一山の寺観が整っていたと考えられ、そのころは西大寺流律宗の寺であったらしい。のち浄土宗となり、現在は単立寺院である。

 

本尊は右手に錫杖を持つ長谷寺式の十一面観音立像で、高さは9メートルを越える巨像である。造像年代は不詳だが、1485年の修理銘があり、また14世紀前半にいくつもの大型の懸仏が奉納されていることから、その頃あるいはそれ以前の作と考えられる。

 

かつては本尊の脇に三十三応現身像が安置されていたが、現在は観音ミュージアムに移されている。

 

 

拝観の環境

観音ミュージアムは本堂に向かって左手に接して建っている。

1980年に宝物館としてはじまり、2015年に半年間休館してリニューアルされた。

2つの展示室からなり。1階に本尊前立ち像(江戸時代)を中心にその左右のケース中に三十三応現身像が安置されている。

像は前後2段に置かれ、理想的なライティングのもと、よく拝観できる。

なお、2階の展示室はテーマに合わせてさまざまな寺宝を展示する。

 

 

三十三応現身について

菩薩の中でも観音は大変人気のある尊格である。観音を本尊とする寺院は多く、それらを巡拝する霊場巡りや観音を主人公とする霊験譚も多い。十一面観音、千手観音などさまざまな変化(へんげ)観音があるが、さらには菩薩形以外のさまざまな姿に身をかえて、人々を救うとされている。

それが33のさまざまな姿に身を変える三十三応現身である。

似た名称のものに「三十三観音」というのもあるが、これは楊柳観音、白衣観音、魚藍観音など三十三の変化観音の総称である。一方、三十三応現身は、それぞれ「○○身」という呼び名がつけられ、観音が、仏、天、長者、比丘尼、童女などの姿に身を変じるというものである。『法華経普門品』(『観音経』)や『摂無礙経(しょうむげきょう)』といったお経を典拠とするが、経典によって若干の異同がある。

 

長谷寺の三十三応現身像は室町時代の作で、寄木造、玉眼。像高は1メートル前後と比較的大きな群像である。

三十三応現身は彫刻の遺例が少なく、大変貴重な像といえる。何より1点も欠けずに揃っているのがすばらしい。

 

 

仏像の印象など

各像は誇張を避け、体勢や表情にはあまり変化をつけない。しかし、足の開き、手の構え、頭やかぶり物の様子、しわなど、仔細に見ていくとそれぞれの像にはさまざまの特徴があらわされている。

僧形の像、冠を着けた俗人の像、大きな袖をつけた女性像は、それぞれ数躰ずつあり、いずれも直立に近い姿で立ち、一見変化に乏しいようだが、衣のつけ方や老若の表現で少しずつ異なっている。

阿修羅身、迦楼羅身など異形の像や怒髪の像、楽器を持つ像などは、ユーモラスな印象がある。

斜めから見ると、腰のあたりにはしっかりと肉がつけ、安定感がある。

 

手先や持物は補われているものが多く、館内の解説画像では像名が記されているものの、実際は確定の難しい像も多い。先にあげた『法華経』、『摂無礙経』のいずれを典拠としているかも不明。

銘文をもつ像もあり、そこから像名が判明するものや、仏身、阿修羅身のようにその特徴的な姿から像名が推定できるものもある。

 

銘文は像内や台座裏面に書かれる。江戸期の修理銘が多いが、1番古いものは1476年を指し(合掌する女性像の頭部内)、16世紀半ば、仏師泉円の銘記のある像もある。

ただし、銘記は修理銘なのか造像銘なのか分りにくい。また、像によっては南北朝時代までさかのぼれる可能性のあるものも混じる。

長い年月の間に失われたり破損したりする像が出る一方で、新たに補ったり、補修したりしながら、33躰の揃いの群像として今日まで伝えられてきたものと思われる。

 

 

その他

近くには鎌倉大仏(高徳院)がある。「長谷観音前」交差点から北へ5分ほどである。

 

 

さらに知りたい時は…

『観音ミュージアム 所蔵品図録』、観音ミュージアム発行、2015年

「室町時代 東国の造像」(『日本の美術』494)、浅見龍介、至文堂、2007年7月

『長谷寺観音三十三応現身像』(展覧会図録)、鎌倉国宝館、1998年

『鎌倉の文化財』第16集、鎌倉市教育委員会、1991年

『鎌倉 長谷観音 歴史と文化財』(長谷寺発行の小冊子)、1982年

 

 

仏像探訪記/神奈川県