東慶寺の聖観音像、水月観音像

  「縁切寺」に伝わる観音さま

住所

鎌倉市山ノ内1367

 

 

訪問日

2010年4月10日、 2015年4月5日

 

 

この仏像の姿(外部リンク)

東慶寺ホームページ(文化財)

 

 

 

拝観までの道

東慶寺はJR横須賀線北鎌倉駅下車徒歩5分。

 

 

拝観料

境内200円+松ヶ岡宝蔵(宝物館)500円 (水月観音像特別拝観は300円)

 

 

お寺のいわれ

開山は執権北条時宗の妻、覚山尼(かくさんに)。臨済宗の尼寺として、室町時代には鎌倉尼五山の第2位とされた。この尼五山というのは、禅宗の五山の制度にならって京都と鎌倉の尼寺それぞれ5つずつが定められたものというが、そのうち今日まで存続するのは東慶寺だけである(ただし、東慶寺は近代以後僧寺に転じたので、現在は尼寺ではない)。

 

江戸時代には「縁切寺」(女性のための駆け込み寺)として知られた。

寺内の宝物館(松ヶ岡宝蔵)には「縁切り」の証文をはじめ、史料や寺宝が展示される。月曜日は休館。

聖観音像は宝物館に安置。水月観音像は本堂隣の水月堂におまつりされている。

 

 

聖観音像

宝物館内、入口に近い壁面に聖観音立像が安置されている。

像高は130センチ余り。やや高い位置に置かれ、間近で拝観できる。照明は暗めだが、向って左側に窓があり、入ってきた光がたたきに反射して明るさが増す晴天の日の拝観がおすすめ。

 

この像はもと鎌倉尼五山の第一位、太平寺仏殿の本尊であったと伝える。

太平寺は鶴岡八幡宮の北東の西御門の来迎寺のそばにあったというが、16世紀半ばに廃絶。仏殿は円覚寺に移築され、これが有名な円覚寺舎利殿である。しかしその本尊はいきさつあって東慶寺に移され、これが今松ヶ岡宝蔵に安置されている聖観音像だという。鎌倉時代末ごろの作と思われる。

ヒノキの寄木造、玉眼。通例の菩薩像と異なり、袈裟を着る。

高く3段となって結われた髪は抽象的な彫刻のような不思議な形をしている。なで肩、袈裟をまとって体の抑揚が抑えられた姿は、量感豊かな平安仏と比較するともの足りなくも思う。

衣は宋風に自由闊達に表現される。顔は落ち着いた感じで、人をはるかに超越した近寄りがたい存在でなく、かといって人に近い生々しさもない。水月観音像もそうだが、玉眼が像の存在感を高めていると思う。

衣には土紋がほどこされているが、剥落がすすんでいる。もとはどれだけ華やかであったかと思う。

 

 

水月観音像

水月観音像は本堂脇の水月堂に安置されている。拝観は事前連絡が必要(お寺のホームページからメールでできる)。

 

左足を踏み下げて岩座上にくつろいだように座る姿で、30センチあまり(左足先までは40センチあまり)の小さな像である。ヒノキの寄木造、玉眼。

やや斜め下を向いているのが、水に映る月を見ている様子を表しているのだろう。

顔は整い、衣は当時流行の水墨画で描かれた像そのままのように自在に表現されている。たいへん可憐な像である。こうした姿の観音像は鎌倉とその周辺地域でのみ、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけてだけつくられている。

 

月を表した円形の窓のようなしつらえの中に安置され、間近で拝観させていただける。ライトもあり、よく拝観できる。

なお、拝観の時間だが、平日は1日4回、土休日は1日2回時間が設定されている。

 

東慶寺ホームページ・水月観音菩薩の特別拝観について

 

 

「仏像特別展」について

松ヶ岡宝蔵では毎年春のシーズンに「仏像特別展」を開催している(2015年は2月3日から3月23日までの予定)。

この特別展示の際には、水月観音像が水月堂から宝蔵にお出ましになる。ガラスケース越しながら間近に、また側面からもよく拝観できる。

 

  

その他(円覚寺龍隠庵の仏像について)

東慶寺からJR横須賀線をはさんで北側にある円覚寺の中の塔頭・龍隠庵(りゅういんあん)の本尊は、東慶寺水月観音像に似た聖観音像である。

 

龍隠庵は、円覚寺の三門を入って正面にある仏殿の北側の高台にある。仏殿に向って左側にある選仏場(座禅堂)の脇に道がついている。

室町時代創建の歴史ある円覚寺塔頭だが、近代以後寺地が二転三転し、住職がいなかった時期もあり、ようやく現在地に移っていまだ復興の途上という。

聖観音像は30センチ弱の像で、創建時からの像と伝える。可憐な小像である。東慶寺の水月観音像と同様の遊戯坐像(くつろいだ姿の坐像)だが、顔つきのふくよかさ、顔の向き、上半身の立て方等微妙に異なる。

お寺の手のある時であれば、お願いすれば拝観させていただける。

志納(円覚寺の入山料300円が必要)。

 

 

さらに知りたい時は…

『鎌倉の仏像』(展覧会図録)、奈良国立博物館、2014年

『鎌倉仏像めぐり』、学研パブリッシング、2010年

『禅宗の彫刻』(『日本の美術』507)、浅見龍介、至文堂、2008年8月

『神奈川県文化財図鑑 彫刻編』、神奈川県教育委員会、1975年

『鎌倉彫刻史の研究』、渋江二郎、有隣堂、1974年

 

 

仏像探訪記/神奈川県