福泉寺と圓光寺の諸仏

  福泉寺本尊は鎌倉前期の基準作例

福泉寺本尊
福泉寺本尊

住所

野洲市永原674(福泉寺)

野洲市久野部266(圓光寺)



訪問日 

2015年3月14日



福泉寺について

野洲駅北口から近江鉄道バス木部線にて「永原住宅前」下車。

徒歩でも野洲駅から30分強ほどで行ける。県道2号線を北東へ、「永原」という交差点の東側。お寺の入口は東側にあり、交差点からだとぐるりとまわって入る。

野洲駅の南側にレンタサイクルがあり、平坦な土地なので、自転車は楽。予約もできる。


近江鉄道バス

 

滋賀県のレンタサイクル店情報


福泉寺の拝観は、問い合わせたところ「いつでもどうぞ」とおっしゃっていただいたが、やはりご法事の都合などもあると思うので、事前にご連絡してうかがうのがよいと思う。



福泉寺の阿弥陀如来像について

福泉寺は浄土宗の寺院で、創建は室町時代という。

本尊は鎌倉時代前期の仏像なので、お寺より古いことになる。本尊がもともとどういったお寺にまつられていたのかは不明である。

ほぼ素地をあらわしているが、これは近年の修復によるものである。

それ以前、住職は造立当初のような豪華な荘厳をめざしたらしい。しかしその過程で銘文が見つかって、正式な調査を経て、現在の姿になった。


端正な印象の像で、口もとがしまって厳粛な感じも受けるが、遠ざかって拝するといかにも円満で福徳に満ちた顔つきのように思う。

肉髻はあまり高くなく、目は切れ長で、額と顎がともに小さめとなっている。

膝やふくらはぎは自然な盛り上がりで、衣の襞はつまめるようにしっかりと刻まれて、鎌倉時代の彫刻の特徴を見せている。


本堂内、すぐ近くで拝観させていただけた。拝観料等の設定は特になかった。



像の銘文について

像内は黒漆塗りで仕上げられていて、入念なつくりであるという。銘文はそこに朱書されている。

造顕の主体、仏師、年が書かれる。残念ながら、何のためにとどこにまつるためにという2点については書かれない。

それによれば、鎌倉前期の1222年の作。仏師は筑前寺主栄有などとある。また、檀越として源氏とあり、その下方に鏡宿長者米持女、巨勢氏の女とある。


鏡宿はこの地より東に3キロのところにあった東山道の宿場と考えられるため、本像のもともとの安置場所は不明ながら、この地域における造像であると考えることができる。そうすると源氏とあるのは、この近江の源氏であろう。

そして米持女、巨勢氏の女、ともに女性が主体となってつくられた像であること、1222年といえば承久の乱の翌年で、近江源氏からは敗者となった後鳥羽上皇方に加勢し戦死したものがいたことが想起される。これを弔うためにゆかりの女性たちがつくった像であったのではないかと想像される。


圓光寺本堂
圓光寺本堂


圓光寺(円光寺)について

福泉寺から野洲駅の方へと県道2号を戻ってゆくと、「久野部」交差点の角に圓光寺というお寺がある。

野洲駅北口からだと北東に徒歩約10分。

拝観は事前連絡必要。志納。堂内、近い位置よりよく拝観させていただけた。


16世紀に天台宗山門派の長福寺と真盛派の圓光坊が合併してできたお寺だそうだ。現在は天台真盛宗である。

本堂は旧長福寺本堂で、天井が低く簡素なつくりながら、内外陣を格子戸で仕切る本格的な密教本堂の形式をもつ。本尊は聖観音像で、秘仏。毎年8月の第1土曜日と翌日の日曜日に開扉されるという。脇には不動、毘沙門天像が立つ。これらは旧長福寺の仏像である。



圓光寺本堂後陣の諸仏

本堂後陣に安置される仏像は、旧圓光坊の仏像である。


中央、すなわち本尊の秘仏・聖観音像の真裏に安置されている阿弥陀如来像は、像高90センチ弱の坐像。寄木造。近くより拝観すると、やや見上げるように感じ、実際の像高よりも大きな印象がある。来迎印を結ぶ。

平安時代の後・末期の作で、衣の襞は浅く、流麗に流る。肉髻はそれほど高くはせず、額は狭い。目はあまり切れ長でない。鼻、鼻の下、口、顎は小さめにあらわし、口もとをひきしめて、おごそかな雰囲気でもあり、また別の角度からは明朗な表情にも見えてくるから不思議である。


地蔵菩薩像は像高約50センチの坐像、寄木造、玉眼。南北朝時代の1350年の銘がある。ただしこの銘は、像に彩色をほどこした旨が書かれ、それが像の完成を意味する物なのか、それとも修理銘であるのか判然としない。

顔から胸にかけて白く塗られ、高い上半身も印象的である。

なお、このお寺にはほかにもう一体地蔵菩薩坐像(像高はほぼ同じだが、右肩をあらわにしているところが異なる)が所蔵されているが、琵琶湖文化館に寄託されている。



さらに知りたい時は…

『神仏います近江』(展覧会図録)、神仏います近江実行委員会、2011年

『女性と祈り』(展覧会図録)、滋賀県立琵琶湖文化館、2007年

『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代 造像銘記篇』3、中央公論美術出版、2006年

「滋賀・野洲市福泉寺木造阿弥陀如来坐像像内銘文の検討』(『文化史学の挑戦』、思文閣出版)、高梨純次、2005年

『地蔵』(展覧会図録)、野洲町立歴史民俗資料館、1997年



仏像探訪記/滋賀県