石山寺多宝塔の大日如来像

  快慶作、若々しい造形

住所

大津市石山寺1-1-1

 

 

訪問日 

2011年3月27日、 2016年4月29日

 

 

この仏像の姿(外部リンク)

滋賀県観光情報  近江のかみ・ほとけたち

 

 

 

拝観までの道

京阪電鉄石山坂本線の終点石山寺駅下車。琵琶湖から流れ出る瀬田川に沿って南へ10分ほど行くと、石山寺の正門である東大門の前に出る。

または、JR石山駅前から野々宮方面行き京阪バスで「石山寺山門前」下車すぐ。

 

石山寺ホームページ

 

 

拝観料

入山料600円

 

 

お寺のいわれなど

石山寺は正倉院文書に見え、奈良時代中期の創建。

はじめは小規模な寺院であったようだが、奈良時代後期に淳仁天皇と孝謙上皇によって石山寺の北方に保良宮(ほらのみや)の造営が開始されると、石山寺はその護持の役割が与えられたのか、「造石山寺所」という役所のもとで寺の整備が進められたようだ。

 

保良宮の方は平城京の北の陪都として構想されたものにもかかわらず、政争のためにその造営は数年で潰えてしまった。しかし石山寺はその後も真言密教の寺、学問の寺、観音信仰の寺として大いに栄えてゆく。

平安時代の前期、官の寺としての色合いが弱まり、かわって醍醐寺の真言密教の影響が強まった。特に、菅原氏出身の碩学である淳祐(しゅんにゅう)は、醍醐寺の座主を固辞して石山寺に隠棲し、多くの著作を残したことで知られる。

平安中期には観音信仰の寺として、貴族の信仰を多く集めるようになった。紫式部はこの地で「源氏物語」の構想を練ったといい、清少納言も「寺は石山」と述べる。当時の日記文学などにも、多く石山寺参籠のことが記述されている。

 

石山寺は幸いにも兵火にあうことが少なく、多くの貴重な典籍が伝えられている。10件以上の国宝を所蔵するが、そのうち2件は建造物(本堂と多宝塔)、他は中国と日本の典籍類である。

本堂は平安時代の造立をベースに桃山時代に淀君が改築を行って今日の姿となった。多宝塔は鎌倉時代、源頼朝の寄進と伝えられ、木造多宝塔としては最古のもの。美しい姿の塔である。

 

 

拝観の環境

多宝塔は本堂から一段あがったところにある。鎌倉初期(1194年)の建築である。

本尊・大日如来像は扉口から金網越しの拝観。やや暗いが、じっくりと見ていると次第に目が慣れてくる。

 

 

仏像の印象

多宝塔本尊の大日如来像は、鎌倉初期、快慶の作。実に若々しく清新の風のある仏像である。

像高は約1メートル。ヒノキの寄木造、玉眼。

智拳印を結ぶ、金剛界大日如来像である。

張りのある肉身は、木彫像と分かっていても、肌のぬくもりや弾力を備えていそうに思える。頭、体、脚部のバランスがよく、手の構えが自然で、堂々として落ち着きと威厳がある。

本来は黒漆塗りの上に金泥で仕上げをしていたようだが、現状漆の地をあらわし、表面は後世の手が入っている。

多宝塔内は柱、天井など極彩色で塗られていたあとが見える。 大日如来像を囲む4本の丸い柱(四天柱)には密教の諸尊が描かれ、かつては金色に輝く大日如来像とともに極めてきらびやかな空間であったと思われる。

 

頭部内に「アン阿弥陀」の銘記があり、快慶が法橋や法眼といった位につく前の造像、すなわち1203年以前の作とわかる。多宝塔建立と同時につくられて、ずっと本尊としてまつられてきたのであろう。このほか「円アミタ仏」「金アミタ仏」など、この時期の他の快慶作品の銘文に登場する人物の名前も記されている。

像内の首部以下には漆を塗って仕上げていて、聖なる空間として納入品があったのではないかと想像されるが、残念ながら失われている。

なお、「石山寺縁起絵巻」によれば、この像は鎌倉幕府の有力御家人・中原親能の妻によってつくられ、頼朝の鬢髪が籠められたとされる。

 

仁王像
仁王像

その他の仏像について

前述のように、石山寺は兵火に焼かれなかったので、優れた仏像も多く伝わっている。

まず東大門の仁王像は、風化も進んでいるが、鎌倉時代の作。滋賀県では最も古い仁王像で、迫力より親しみを感じる。

 

門をくぐって参道をまっすぐに、拝観入口を通ると、右に石段があり、その上に毘沙門堂、御影堂、本堂などの伽藍が立つ。

毘沙門堂の本尊兜跋毘沙門天像は平安時代の一木造で、地天女に乗る。総高は2メートルを越える。安定感のある優れた仏像である。兜跋毘沙門天像といえば、異国風の鎧を着た東寺の像が有名だが、この像は一般の毘沙門天像と同様の姿である。袖を大きく出して翻すということをせず、軽快な印象がある。お堂の入口から金網越しに見る。

 

御影堂もまたお堂の扉口からの拝観。堂内中央に石山寺を中興した淳祐(しゅんにゅう)の像が安置されている。室町時代の塑像で、老僧の姿をたいへんよく表現したすぐれた肖像彫刻である。

 

* 本堂内安置仏については、石山寺本尊胎内仏の項をご覧ください。

 

 

豊浄殿の拝観

多宝塔からさらに奥に豊浄殿(宝物館)がある。

春(3月半ばから6月)と秋(9月から11月)のみの開館。「石山寺と紫式部」がテーマで、『源氏物語』に関する書画が展示の中心。

石山寺伝来の仏像のうち、普段お堂に安置されていない像がここで保管されていて、展覧会ごとに入れかえながら展示が行われている。有料。

 

 

さらに知りたい時は…

『快慶』(展覧会図録)、奈良国立博物館ほか、2017年

『琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展』(展覧会図録)、三井記念美術館、2012年

『石山寺の美』(展覧会図録)、奈良国立博物館・石山寺、2008年

『石山寺の信仰と歴史』、綾村宏編、思文閣出版、2008年

『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代 造像銘記篇』2、中央公論美術出版、2004年

『観音のみてら石山寺』(展覧会図録)、奈良国立博物館、2002年

 

 

→ 仏像探訪記/滋賀県