法起寺と法輪寺の十一面観音像

  ともに像高3メートル半、スギ材の立像

法起寺十一面観音像
法起寺十一面観音像

住所

斑鳩町岡本1873(法起寺)

斑鳩町三井1570(法輪寺)

 

 

訪問日 

2011年1月10日

 

 

この仏像(法輪寺)の姿(外部リンク)

法輪寺ホームページ・法輪寺の概要

 

 

 

拝観までの道

法輪寺は、法隆寺東院夢殿や菩薩半跏像で有名な中宮寺から北へ900メートルほど。さらに東へ700メートルほど行くと法起寺(ほうきじ、ほっきじ)がある。

最寄りバス停は奈良交通の「中宮寺前」「法起寺口」だが、天気がよければ法隆寺駅前や法隆寺の参道前からレンタサイクルが快適。

 

 

法起寺について

法起寺は、聖徳太子ゆかりの岡本宮をのちに寺としたのがはじまりとされる。

発掘調査の結果、創建時には塔と金堂が並ぶ形式の寺院であったことがわかっている。法隆寺西院伽藍と似るが、位置関係は逆で、塔が東、金堂が西という配置。

その軸線は法隆寺西院の前身寺院である若草伽藍や斑鳩宮跡と同じく西へ20度傾く。草創期法隆寺と関連しながら創建された寺院といえそうである。

 

現在は聖天堂、三重塔、講堂、収蔵庫からなる比較的小規模な寺院で、塔以外は新しい。

三重塔は8世紀初頭の建築で、度重なる火災を免れて現代に伝わったことは奇跡のようである。この塔は近づくと、実に堂々とそびえ立つ。法隆寺五重塔の一、三、五重めの寸法を用いてつくられているそうで、そのため三重塔としては規模が大きく、また上層への逓減率が大きくなっている。

 

仏像は小金銅仏の菩薩立像と平安時代の十一面観音像が伝わる。菩薩立像は奈良国立博物館に寄託中。十一面観音像は収蔵庫に安置される。扉口からガラス越しの拝観。

拝観料300円。

 

法起寺ホームページ

 

 

法起寺の十一面観音像

像高は約350センチの立像。スギの一木造で、平安時代前期〜中期にかけての像である。後述する法輪寺の十一面観音像と時代、大きさ、材質まで同じであるが、印象はかなり異なる。

顔は四角ばり、横に広い感じである。目は半眼。鼻とくちびるが接近し、くちびるは前に突き出す。下半身は長い。がっしりした上半身に比べ、下半身には厚みがあまりないように感じられるのは、材の制約のためかもしれない。

条帛や下肢にはいくつも渦巻きの文が見える。右肩から下がってきた天衣が、左肩からの天衣にからんで、W字のようにうねっているのは、類例はあるが、比較的珍しい。

極端ないかり肩で違和感があるが、これは両腕が後補で、肩のつくりも本来よりもきつい感じとなってしまっているためもあるかもしれない。

 

この像は収蔵庫ができる以前は講堂の本尊であったのだが、個性的な台座に乗っていた。本体と同じスギ材(本体の材を伐採した切り株の部分であるかどうかまではわからないが)の岩座で、根が残っている状態のものである。これは立木仏の考え方にのっとった大変珍しい例である(現在は安定感重視の新しい台座に変わっている)。

 

 

法輪寺について

法輪寺は東に金堂、西に塔という法隆寺西院と同じ伽藍配置。寺史は不明な点が多いが、飛鳥〜白鳳期の仏像が伝わり、奈良時代以前からの古寺であるのは法起寺と同様である。

金堂は江戸時代の再建。

三重塔は法隆寺、法起寺の塔とともに「斑鳩三塔」と呼ばれていたが、20世紀なかばに落雷で炎上してしまった。なんでも戦時中の金属供出で避雷針が失われていたためとのこと。現在の塔は戦後の再建。

 

その奥に立つ講堂が収蔵庫を兼ねていて、各時代の仏像が12躰と、その他の寺宝が並べられている。拝観料は500円。堂内でよく拝観できる。晴天の日は外光が入り、ことによく拝観できる。

 

 

法輪寺の十一面観音像

講堂の中央にはひときわ大きく十一面観音像がたつ。この像をはじめ、平安前期の仏像が何体も安置されていて、このお寺がその時期に隆盛であったことがわかる。

 

十一面観音像は現講堂の前身の建物の時代からの本尊で、像高は約360センチ。台座蓮肉まで含む一木造である。材はスギ。ただし、何ぶんこれほどの巨像であるために、材を継ぎ足している部分もあるそうだ。

顔つきが雄渾である。目は見開き、上まぶた、下まぶたの輪郭をしっかりとつくる。顎のラインも強い。顔全体の四角く、力強い。額からこめかみにかけて束ねられた髪も厚みがあって印象的である。

首は短く太い。体は長大で、腕も太く長い。裙の折り返しも立体的にあらわされる。首はわずかに傾けているようにも思う。姿勢は上体がややそって、Sの字状になるが、これらは材の制約もあってのことかもしれない。

一方、横、斜めから見ると、体の厚みはそれほどでない。

 

 

その他

法輪寺の講堂のうしろに妙見堂というお堂がある。本尊は秘仏だが、そのお前立ち像は講堂で拝観できる。厨子に入った4臂の妙見菩薩像で、近世の小像である。

妙見堂の秘仏・妙見菩薩像も同じ4臂の姿。こちらは平安時代の一木造の像。像高は160センチで、素地をあらわし、脇侍像を従える。その時代、現世利益を願って妙見菩薩を本尊とする修法が盛んに行われたことが知られるが、今日まで伝わる像は少なく、本像は大変貴重といえる。毎年4月15日に開扉。そのほか2月3日の星祭りの日の法要時にも開扉されるとのこと。

 

三重塔に安置されている釈迦如来像(平安時代)も非公開。法輪寺では毎年11月1日〜7日に「秋季特別展」が開催されていて、過去、この像が公開されたことがあったようだ。この特別展は毎年内容が替わるので、詳しくはお寺にお問い合わせを。

 

 

さらに知りたい時は…

「法輪寺薬師如来像・伝虚空蔵菩薩像をめぐって」(『美術史』178)、鏡山智子、2015年3月

『新装版 大和の古寺』1、岩波書店、2009年

「法起寺本堂十一面観音菩薩立像」、水野敬三郎(『日本彫刻史研究』、中央公論美術出版、1996年)

『斑鳩の寺』(『日本の古寺美術』15)、大橋一章、保育社、1989年

『解説版 新指定重要文化財3、彫刻』、毎日新聞社、1981年

『大和古寺大観』1、岩波書店、1977年

 

 

仏像探訪記/奈良県