新薬師寺と不空院

  高畑町の2古刹

新薬師寺
新薬師寺

住所

奈良市高畑町1352(新薬師寺)

奈良市高畑町1365(不空院)

 

 

訪問日

2011年9月18日

 

 

この仏像(新薬師寺)の姿(外部リンク)

新薬師寺ホームページ

 

 

 

新薬師寺、不空院への道

JR奈良駅、近鉄奈良駅から奈良交通バスの市内循環線などで「破石町(わりいしちょう、新薬師寺道口)」で下車。東へ徒歩約10分。

両寺院はすぐ近くにあり、新薬師寺の東門から数十メートル北へ進むと右手に不空院の門がある。

 

 

新薬師寺について

新薬師寺は、奈良時代に官立の寺院として創建された。東大寺の東南部に大きな寺域を占めていたことが知られるが、成立の事情や、現本堂・本尊のいわれなど、わかっていないことも多い。

創建時の金堂は、現在より西側へと広がっていた広大な寺地の中央にあり、それぞれ脇侍を伴う7躰の薬師如来像と十二神将像が安置されていたというから、さぞや壮大な建物だったと思われる。

 

現在の本堂も奈良時代の建物である。しかし、もともとは中心堂宇ではなく、金堂や講堂が立っていたお寺の中心位置から離れた、いわば別院的な堂であったらしい。後述のように、内部は他に例を見ないつくりをしていて、特別の修法のためのお堂であった可能性がある。

創建時の金堂は10世紀に倒壊してしまい、仏像も失われてしまったようだ。そののち、現在の本堂がお寺の中心となったと考えられている。

 

本堂は正面を閉めていて、入場は西側からである。中は蛍光灯の明かりで、角度によってはその光が目に入るが、まずまずよく拝観できる。

拝観料は600円。

 

 

新薬師寺の薬師如来像について

新薬師寺の本堂は、窓のない構造で、中央に円形の大きな土壇が設けられ、これが須弥壇となっている。その上には本尊の薬師如来坐像が安置され、周囲に十二神将がぐるりと並ぶ。

一見して、たいへんインパクトのある配置である。

 

本尊の薬師如来像は像高2メートル弱の坐像。カヤの一木造。光背には6躰の薬師像を取り付けている。

創建時の金堂本尊は7躰の薬師像であったのだが、この像は本体と光背化仏をあわせて七仏薬師としている点が異なっている。

その構造もたいそう変わっていて、一木ではつくりきれない膝前の部分について、一般的には横一材の木材を用いて彫り出されるのだが、この像は縦材をいくつも横につないで本体と木目を合わせるようにして彫りだされている。一木から仏を彫り出すのだという強い意識が感じられる。

 

この像の魅力は何といっても目で、大きく見開き、きわめて強いメリハリをもって彫られている。とはいっても息詰まるような感じでない。「明るい」「包容力」といった言葉が浮かぶ。とても魅力的な目で、印象的である。

衣も力強く線を描き、右脇腹の襞(ひだ)など非常に深く刻まれている。

 

 

その他の新薬師寺の仏像

薬師像の周囲に立つ十二神将像は、等身大の像。奈良時代を代表する塑造の天部像である。ただし1躰のみ近代の像に変わる。

この十二神将像は、もと春日の南麓にあった岩淵寺の像と伝える。

 

また、この寺には景清地蔵、おたま地蔵と名付けられた珍しい地蔵尊が伝わっている。

 

その他、平安時代の不動三尊像は奈良国立博物館に、鎌倉時代の四天王像は大阪市立美術館に寄託中。また、新薬師寺旧蔵の准胝観音像も奈良国立博物館に寄託されている。

 

不空院
不空院

不空院について 

新薬師寺のすぐ北にあるお寺である。

鑑真ゆかりの場所、また空海もここに住んだ等伝えられる。

鎌倉前期に律宗の円晴によって再興されたという。本尊の不空羂索観音像は、その頃の造立と思われる。

 

今はそれほど大きな寺院ではないが、かつては広く信仰を集めた寺院だったようだ。このあたりはかつては福井町とよばれていたが、それは「ふくういん」が縮まって生まれた地名という。

春と秋に特別公開の時期を設けている。拝観料は600円。それ以外の日も事前予約で拝観できる(拝観料は500円)。

 

不空院ホームページ

 

 

不空院の不空羂索観音像

不空院の本尊は、鎌倉時代の不空羂索観音像である。

お寺では興福寺南円堂の不空羂索観音像をつくるに先立ち、「試みの作」としてつくられたと伝えるが、実際には興福寺像を縮小した模刻というべきか。しかし、足の組み方など、異なるところもある。

江戸時代の絵図によると、この像は南円堂を小さくしたような八角円堂に安置されていたようで、興福寺南円堂像を強く意識した像であるということは言えそうである。

 

像高は約1メートルの坐像。ヒノキの寄木造、玉眼。

張りのある丸い顔に落ち着いた表情の像である。

姿勢よく、頭体のバランスにすぐれ、脚部は左右によく張って、全体が三角形の中にぴたりとおさまって、安定感に富んでいる。手は細めで、8臂のバランスもよい。

興福寺南円堂本尊が破格の迫力を有するのに対して、落ち着きや安定感がある像であるということができる。

 

本堂の中心、高い壇の厨子中に安置されている。外陣からの拝観で、やや距離があり、また、頭上のまげの様子など見えないところもあるのが残念。

 

 

さらに知りたい時は…

『日本美術全集』3、小学館、2013年

「様式からみた新薬師寺薬師如来像」(『仏教美術論集 様式論1』、竹林舍、2012年)、藤岡穣

『奈良の仏像』、紺野敏文、アスキー新書、2009年

「新薬師寺薬師如来坐像の造像年代とその背景」(『仏教芸術』247)、瀬谷貴之、1999年11月

『新薬師寺と白毫寺・円成寺』(『日本の古寺美術』16)、清水眞澄・稲木吉一、保育社、1990

『西大寺展』(展覧会図録)、奈良国立博物館、1990年

『月刊文化財』273、1986年6月

『大和古寺大観』4、岩波書店、1977年

 

 

仏像探訪記/奈良市