海住山寺本堂の十一面観音像

  これぞ霊仏!

 

住所

木津川市加茂町例幣海住山20

 

 

訪問日 

2015年11月8日

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

海住山寺ホームページ 寺宝・文化財

 

 

 

拝観までの道

海住山寺(かいじゅうせんじ)はJR関西本線の加茂駅の北方。

木津川を恭仁大橋で渡り、国道163号の交差点「海住山寺口」を越えて、さらに北へ。途中から厳しい上り坂となる。

「海住山寺口」の手前に「岡崎」というバス停があり、加茂駅西口からここまで乗ると、若干歩く距離が少なくなる(和束町小杉行きの奈良交通バス)。ただしバスの本数は多くない。

「岡崎」からお寺まで、上っていくと徒歩40分、下りは25分くらい。

他の行き方としては、加茂駅からのタクシー。駅の東口、西口の両方にタクシー乗り場があり、たいていどちらかにはタクシーがいる。

 

*2019年8月現在、本堂改修中。拝観再開時期などは問い合わせてください。なお、本尊は奈良国立博物館・なら仏像館で展示されています。

 

 

拝観料

400円(特別公開期間は別料金)

 

 

お寺や仏像のいわれなど

海住山寺という名前はどことなくユーモラスで、一度聞いたら忘れられないが、これは南方海上にあるという補陀落山のことを指している。つまり観音信仰の寺という意味であるらしい。

鎌倉時代初期に活躍した名僧、解脱房貞慶によって建てられた。もっとも観音寺という前身寺院があり、貞慶はこれを再興したともいう。本尊をはじめ、鎌倉時代以前の仏像も伝えられているので、やはり前身の寺院があったものであろうか。

貞慶は興福寺の僧で、笠置山に移り、晩年はこの海住山寺に住んだ。

近世まで興福寺に属していたが、近代以後真言宗となり、今に至る。

 

そんなに広くはない境内に五重塔、文殊堂、本堂、本坊がたっている。

五重塔は鎌倉前期の1214年のもの。室生寺の五重塔についで小さな塔であり、初重に裳階がつけられているのが特徴である。貞慶が仏舎利を安置するために建立を開始し、その死の翌年に完成したものである。

文殊堂も鎌倉時代のもので、貞慶の13回忌に向けてつくられた経蔵にあたるのではないかと考えれている。

本堂は近代の再建。

 

 

拝観の環境

本堂本尊は十一面観音像で、像高170センチ弱の立像。厨子中にあり、下半身が見えないのが残念だが、近くよりよく拝観させていただける。

 

 

仏像の印象

カヤの一木造。仏頂面をのせている頭上のまげから台座まで、また両腕までを一材から彫り出している。像高は約170センチ、すなわち等身大の像であるが、大きく感じられる像である。

全体に彫りは浅い。

 

つくられたのは10世紀ごろと考えられている。しかしもっと古い像だと考える人もいる。

彫りが浅いのは、平安前期彫刻のダイナミックを失ったからと考えるよりは、木材をできるだけ彫り込まずその命のままにして仏像としても表現したいという考えのあらわれのようにも思える。頭上のまげはまるで丸太のようで、これも材の木の霊性をそのままあらわそうとしたためのようでもある。顔の表情など雰囲気が非常に神秘的であり、内にこもる力ははかりしれないように感じられる。とにかく魅力的な像である。

 

額は小さめにし、あごはしっかりと、肩は怒り肩ぎみで、胸は広く、胴は絞る。ほぼ直立だが、腰は向かって右側が上がって、動きを見せている。

幾度もお会いしに行きたいと感じる仏像である。

 

 

特別公開期間にお会いできる仏像

海住山寺では毎年秋、特別公開を行っている。2015年は10月31日から11月15日までで、拝観料は800円だった。本堂や本坊で寺宝が公開され、文殊堂も開扉されて、鎌倉時代の文殊菩薩像などの安置仏が拝観することができた。

また、この期間の前半(2015年は11月8日までだった)に限り五重塔初層が公開(雨天時は公開しない)。

 

ことに普段は博物館に寄託されている檀像様の十一面観音像や大仏殿様の四天王像(もとは五重塔内で舎利容器の四方に安置されていたのではないかとの推測がされている)が、この時期お寺で拝観できる。これらは本堂内本尊に向かって左側の間で、ガラスケース内に安置され、理想的な照明のもと見ることができた。

そのほか、仏画や貴重な貞慶関係の文書も展示されていた。

 

檀像様の十一面観音像はもと奥の院の本尊とされ、また貞慶の念持仏であったとも伝えられる。像高約45センチの立像で、若々しい顔立ちが魅力的である。頭は大きめに、腰を左にひねって、変化をつける。額はやや広く、顎は小さく、目と眉は接近させて、小鼻は小さくつくる。

条帛を左の肩の下で結び、胸の下の肉をぷっくりと豊かにつくって、下肢の衣も丁寧に仕上げ、実に美しい。唐風の檀像だが、日本的な親しみやすさを感じさせる。

 

四天王像は彩色が実によく残る。すぐ前から、横から、また斜め上からとじっくり拝観できた。

 

 

その他1

本尊に向かって右側の間には役行者と前鬼、後鬼の像が安置されている。中尊の役行者は像高80センチあまり。厳しい修験者というよりは、かわいらしい像で心惹かれる。

墨書銘があり、鎌倉末期の1330年に定朝直系の仏師院延がつくったと書かれる。院延は他に事績が知られないが、この時期の院派仏師の作例として貴重である。

本像は特別公開期間でなくとも拝観が可能なようだ。

 

 

その他2

現光寺(木津川市加茂町)の本尊十一面観音坐像(鎌倉時代)の特別拝観も海住山寺で受け付けている。拝観料は500円で10名以上(または同等条件)。ただし2016年3月末までは修復のために拝観できないとのこと。

 

 

さらに知りたい時は…

『京都南山城の仏たち 古寺巡礼』、京都南山城古寺の会、2014年

『海住山寺の美術(新版)』、海住山寺発行、2013年

『古佛(新装版)』、井上正、法蔵館、2013年

『解脱上人 貞慶 鎌倉仏教の本流』(展覧会図録)、奈良国立博物館、2012年

『日本の古寺美術』18、保育社、1987年

『大和古寺大観』7、岩波書店、1978年

 

 

仏像探訪記/京都府