松尾大社の三神像

  神像彫刻の古例

住所

京都市西京区嵐山宮町3

 

 

訪問日 

2014年7月20日

 

 

この像の姿は(外部リンク)

松尾大社・宝物館

 

 

 

拝観までの道

松尾大社(まつのおたいしゃ)は、阪急嵐山線の松尾大社(まつおたいしゃ)駅下車、西へ徒歩3分。

 

 

拝観料

神像館の拝観は庭園と共通で500円(抹茶付きは1000円)。

 

 

神社や神像のいわれなど

京都の中でも歴史ある神社である。広隆寺を開いた秦氏の氏神としてはじまり、平安京が開かれると、賀茂神社とともに王城鎮護の役割を担った。

東北東を向いて建ち、その奥は松尾山の丘陵地帯となっている。ここに巨岩(磐座)がまつられているそうだ。この神社の信仰の始まりとなった神聖な場所なのだろう(許可のもと登拝できる。初穂料必要)。

本殿は室町時代の建築。

中世以後は酒の神としても多く信仰を集めた。

かつては松尾社、松尾神社といい、20世紀なかばより松尾大社と改称して現在に至る。

 

この神社に伝来する三神像は、平安時代前期を代表する神さまの像である。

近代初期の神仏分離まで神宮寺(神社の南側の末社群の東にあったという)があり、三神像は神宮寺の正殿にまつられていた。

 

神宮寺の創建は平安前期にさかのぼる。

神宮寺の神像について、複数の貴族の日記に記述がある。当時広く尊崇を集め、また畏怖されていたのであろう。

たとえば、院政期の前半に活躍した貴族である源師時の日記『長秋記』には、神像は天台宗の円珍が造立したとある。また像から笏が落ちるという怪異があったことなどが記されていている。

 

 

拝観の環境

三神像は長く京都国立博物館に寄託されていたが、今は境内の神像館に安置されている。入口は本殿に向かって右手。

順路に従って庭園を拝観しながら進む。神像館に入ると、中央にひときわ大きな3躰の像が安置され、その後ろの壁面には比較的小さな神像が並んでいる。

ガラスケース越しだが、近くよりよく拝観できる。

中央の三神像は独立ケースなので、側面や背面も見ることができる。

 

 

神像の印象

3躰の神像は、中央に老相、向かって右に女神、向かって左が壮年の姿をしている。

像高は80センチ~90センチ余りの坐像。ヒノキかと思われる針葉樹の一木造。体幹部の大きさや木心の位置が共通することから、同じ1本の木からつくられた可能性がある。

老相の神はほおがややこけ、厳しい表情、すばらしい姿勢で座る。

壮年の神はまん丸い顔に丸みを帯びた体を若干反り気味にして、透徹したような表情である。

一方女神像は、ふくよかな頬、豊かな髪、表情はなにやら複雑な感じで、わずかに右を向く。

それぞれにずしりと存在感があって、すばらしい。

 

造像の年代は9世紀と考えられている。東寺伝来の三神像、薬師寺伝来の三神像と並ぶ、神像彫刻の古例である。東寺、薬師寺の像は普段は見られないので、この松尾大社の像がいつでも拝観可能なのはうれしい限りである。

東寺および薬師寺の像は僧形八幡神と2躰の女神像という組み合わせなのに対して、本像は上述のように2躰の男神と1躰の女神という組み合わせであり、また男神は平安期の官人に近い服装で笏を持つこと、偉大なる祖先神といった趣きが強く感じられることなどの特徴が顕著である。

そういった神の像ならではの表現が強調されている一方で、女神像の首のところに3本の線(三道)が刻まれていること、男神像は右足を上にして組み、脚部には仏像と同様の衣の襞(ひだ)があらわされているところなど、仏像彫刻の表現が取り入れられている。

 

なお、一見したところでは分からないが、実はこの三神、相当修復の手が入っている。かつては腐朽虫損が激しく、脚部も脱落していたそうで、20世紀初頭の修理によって現在見るような姿としてよみがえったそうだ。

 

 

他の神々の像

三神の後ろに並ぶ十数躰の神々は、摂末社にまつられていた像である。摂末社(摂社と末社)は境内外の小神社で、それぞれの神様がまつられていたとのこと。

像高は小さなものは約10センチ、大きなものは50センチくらい。いずれも一木造で、平安時代から鎌倉時代の像である。

中には朽損が進み、痛々しい姿の像もあるが、いかめしい顔の男神、笑う男神、色鮮やかに彩色を残す女神、あか抜けない表情がかわいらしい女神、僧形や天部形の神などさまざまなしぐさが面白く、見飽きない。

 

 

さらに知りたい時は…

『国宝大神社展』(展覧会図録)、東京国立博物館ほか、2013年

『松尾大社の神影』、松尾大社、2011年

『松尾大社』、松尾大社、学生社、2007年

「初期神像彫刻の研究」( 『東京国立博物館紀要』40)、丸山士郎、2005年

『平安時代彫刻史の研究』、伊東史朗、名古屋大学出版会、2000年

「女神坐像」(『学叢』17)、伊東史朗、1995年

『神像彫刻』、岡直己、角川書店、1966年

 

 

仏像探訪記/京都市