正法寺の十一面観音像
光背の銘から12世紀前半の作とわかる
住所
度会町注連指
訪問日
2011年10月10日
この仏像の姿(外部リンク)
拝観までの道
正法寺(しょうほうじ)は、お茶の産地として有名な度会(わたらい)町の北西部、注連指(しめさす)というところにある。
交通は伊勢市駅前から注連指行きの三重交通バスに乗車し、終点で下車。
奈良県との県境に源を発し、東流して伊勢湾へと流れる宮川という川をさかのぼるようにして、45分間ほどバスに揺られる。下車後、南へ徒歩2分。左側にお寺が見えてくる。
→ 三重交通バス
本堂から一段上がったところに収蔵庫があり、十一面観音像が安置されている。
この像は年に2度、1月18日と9月18日に開帳されるが、その他でも事前に区長さんに連絡してお願いしておけば拝観が可能。
よく地元の小学生が郷土史学習で訪れたりしているそうだ。
拝観料
拝観料は1,000円、ほかに写真撮影を願うと1,000円かかる。
お寺や仏像のいわれなど
正法寺は曹洞宗寺院。かつては正法庵と呼ばれていたらしいが、それ以外の由来等、あまり知られていない。
遠からぬところに滝があり、町の名所でもあるらしい。かつてそのそばにお堂があり、十一面観音像はそこにまつられていたという。
光背に墨書があり、「天永」「願主藤原有助」と読める。
天永は12世紀前半の元号であり、平安時代後期の造像年代がわかる像として極めて貴重である。
拝観の環境
収蔵庫内で間近より拝観させていただける。
厨子中の安置ではなく、横からのお姿もよくわかる。
仏像の印象
像高約1メートル。クスノキの一木造。光背、台座はヒノキでつくられている。
すらりと細身のやさしげな観音さまである。
お顔で特に印象的なのは目で、一見すると切れ長だが伏し目がちに彫られているようだが、よく見ると豊かに大きく彫られている。
まげは小さく、その上の仏頂面は失われている。頭上面は6つのみ残る。
頭は若干傾げている。上半身は堂々としているが、特に厚みはない。衣のひだや天衣のつくりなど、全体に素朴で、親しみを感じる仏像と思う。
体には白と赤の色が目立つが、白は白土による下地、赤はベンガラか何かの着色で、他にも裙の折り返しや頭髪など別の色が塗られていたようだ。当初の華麗な色彩を想像するのはなかなか難しいが、一部でも当初の彩色が残っているのは貴重である。板光背の蓮華文からも、当初の華やかさが偲ばれる。
さらに知りたい時は…
『三重県史 別編 美術工芸』、三重県、2014年
「平安在銘彫刻資料16 正法寺十一面観音立像 西音寺薬師如来坐像」(『Museum』197)、水野敬三郎、1967年8月
『日本彫刻史基礎資料集成 平安時代・造像銘記篇』2、中央公論美術出版、1967年