善根寺薬師堂の古仏

  30躰近い木彫仏を伝える

住所

三原市小坂町

 

 

訪問日

2009年11月15日

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

三原観光navi・善根寺収蔵庫

 

 

 

拝観までの道

善根寺(ぜんこんじ)は三原駅から西北西の7、8キロのところにある。

交通は、三原駅とその西隣の本郷駅を結んでいる芸陽バス三原本郷循環線(仏通寺行き、高坂行きのものもある)で「小坂小学校前」下車。 小学校の前の橋を渡って北へ進むと、まもなく見えてくる。

 

芸陽バス

 

公開は、原則奇数月の第3日曜日午前中だが、事前にお願いしておけばそれ以外でも拝観できる。

 

 

拝観料

資料代として300円

 

 

お寺や仏像のいわれなど

善根寺は寺といっても収蔵庫と鐘楼があるだけで、無住。地域の方が保存会をつくって管理している。

創建の事情等まったくわからない。中世には、近くにあった稲村山城の城主田坂氏(小早川氏重臣で、毛利氏の勢力の浸透に反対し滅亡)の祈願所であったといわれる。

収蔵庫の中には30躰近い数の木彫仏が安置されている。この地域にかつてあったいくつもの寺院が衰退する過程で集まってきたのかもしれない。

 

江戸時代後期の史料には、すでにお寺は滅び薬師堂のみ残って、薬師三尊像、十二神将像、その他仏像がある、定朝作であると書かれている。また、2月の初午には村人が集って賑わい、近在の真言宗僧を招いて法要を行ったという。

現在は、1969年に立てられた耐火建築の収蔵庫に仏像がおさめられている。

 

 

拝観の環境

堂内は明るく、また間近で拝観できる。

 

 

仏像の印象

残念ながら仏像の多くは破損、風化が進んでいて、目鼻立ちも不明確となり、また後世に大きく修理の手が入った像も多い。お堂の中央に安置されている薬師如来像はひときわ大きな坐像で、いかにも平安前期から中期にかけての量感のある彫像という感じだが、この像も修復された部分が多いようだ。

 

その脇侍としてまつられている日光、月光菩薩像は、像高170センチ弱の立像で、比較的保存状態がよい。左脇侍(向って右側)の月光菩薩像はほぼ直立し、細身で、石彫やブロンズの仏像を思わせる。上品な顔立ちの美しい像である。条帛の結びもきれいで、下肢は翻波式衣文が規則正しく波打つ。

右脇侍の日光菩薩像はやや肉付きよく、胸はそれほどでないが腹は丸く出る。首をわずかに傾け、腰を若干ひねり、左足を少し前に出す。足も左脇侍像に比べれば肉付きがある。下肢の衣文線も太くあらわしている。条帛の結びは大きく華やかである。

 

月光菩薩像の後ろに控える吉祥天像は、顔つきはかなり傷んでいるが、それでも美しさがにじみ出てくるような像である。袖には翻波式衣文がみえる。

四天王像は補修部分がかなり多いようだが、腰の太さは平安前期彫刻のもつ量感をいかんなく発揮している。

そのほか、破損仏の中には小さな頭部にすらりとした体躯をもったスタイルよい像がいくつかあり、心惹かれる。

 

 

さらに知りたい時は…

『三原の仏像』(展覧会図録)、三原市教育委員会、2014年

『三原市の文化財』、三原市教育委員会、2000年

『三原市史』1、三原市役所、1977年

 

 

仏像探訪記/広島県